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口座が消えた日 — 5回ゼロにした私が、AIと「負けない仕組み」を作り始めるまで

FX自動売買検証記録

2021年1月21日、私は海外FX口座に20万円を入金した。

手元に当時の入金履歴が残っている。3月に20万円、8月に20万円、9月にまた20万円。翌年にも5万円、6万円——。

入金と破綻のタイムライン(2021-2026)
図1|入金と破綻のタイムライン。同じ金額の入金が繰り返される履歴そのものが記録になっている

同じ金額を何度も入金しているのには、理由がある。そのたびに、口座のお金が全部なくなっていたからだ。

これは、FXで5回以上口座をゼロにした会社員が、一度すべてをやめて、AIと一緒に「なぜ負けたのか」を数字で解剖し、自動売買の仕組みを作り直していく記録だ。最初に断っておくと、この連載は「必ず勝てる方法」の話ではない。むしろ逆で、「勝てそうに見えるものが、どうやって人を破産させるのか」を、私自身の取引明細を使って検証するところから始まる。

興味本位で始めて、一瞬で退場した

FXを始めたきっかけは、正直に言えば興味本位だった。

FXは「円をドルに両替して、レートが動いたら両替し直す」だけの取引だ。1ドル150円のときに買って151円で売れば、その差が利益になる。ただし普通にやると、動きは1日にせいぜい1%程度。そこで登場するのが「レバレッジ」——預けたお金を担保に、その何倍もの金額を取引できる仕組みだ。

最初は国内の業者で始めた。国内のレバレッジは最大25倍。それでも私の資金は、あっという間に「ロスカット」——損失が膨らんだときに業者が強制的に取引を終了させる仕組み——で消えた。

普通なら、ここでやめるのだと思う。私は「国内のレバレッジでは足りなかったのだ」と考えた。海外業者なら、レバレッジは最大1000倍。同じ資金で40倍の勝負ができる。今振り返ると、これは「浅いプールで溺れたから、深いプールに行こう」という発想だった。

99%勝てる手法を見つけてしまった

海外口座に移ってから、YouTubeで見つけたある手法を参考に、自分なりのルールを作った。

  • 資金4万円ごとに、最小単位(0.01ロット=1,000通貨)だけ取引する
  • 1日の目標は40pips程度(pipsは値動きの単位。円建てなら1pips=約0.01円。0.01ロットなら1pipsで約10円の損益だ)
  • 予想と逆に動いたら、同じ方向にもう1本買い増して、平均取得単価を下げる——いわゆる「ナンピン」

このルールは、驚くほどよく機能した。逆に動かれても、買い増しながら耐えていれば、たいていどこかで戻ってくる。戻った瞬間に全部を決済すれば、その日はプラスで終われる。

仕事が終わった夜に数分から数時間だけ取引して、毎日数千円から数万円が積み上がっていく。勝率は体感で99%。ほとんど毎日勝てるのだ。

だが、その裏で口座は何度もゼロになった。勝ち続けては、たまに来る「戻ってこない日」にすべてを失う。入金履歴が示す通り、私は2021年から何度も口座を作り直しては、同じことを繰り返した。口座に入れた総額は数百万円になる。

20万円が400万円になった。そして消えた

それでもやめなかったのは、この手法が「ほんとうに増える」からだ。

最後の口座では、20万円から始めて400万円まで育てた。1ドル145円前後の頃、2025年のことだ。毎晩の数十分で資産が20倍になった口座を眺めながら、今度こそやり方を掴んだと思っていた。

その口座が消えた日のことは、よく覚えている。というより、覚えているほどの出来事ではなかった。

私は仕事中で、スマホをちらりと見て、残高がゼロに近づいているのを確認して、思ったことはひとつだけだった。

「またか」。

初めて口座を飛ばしたときは、眠れないほど悔しかったはずだ。それが5回目には、昼休みのニュースを眺めるのと同じ温度になっていた。人は大きな損失に慣れることができる。そして慣れた頃が、いちばん危ない。

400万円は、99回の勝ちの上に積み上がっていた。それを100回目の負けが、1日で持っていった。「99%勝てる」の正体とは、小さな利益を毎日確定する代わりに、たまに来る大きな逆行をすべて自分ひとりで引き受けるという取引だったのだ。

そこから、FXと距離を置いた。

会社員に「裁量トレード」は向いていない

離れて冷静になると、見えてくることがあった。

私は専業トレーダーではない。平日の日中は仕事があり、チャートに張り付くことはできない。数秒の判断が求められる場面で、私はいつも「仕事の合間」だった。ナンピンで日をまたいで持ち続けているときだけ、仕事中にこっそり残高を確認する——勝負する時間帯も、判断の質も、すべてが中途半端だった。

「ルールを機械に実行させる自動売買(EA)にすればいい」ことは、知識としては知っていた。だが、自分の手法を数値のルールに書き起こすイメージがまったく湧かない。プログラムも書けない。無理だ、と思っていた。

転機はAIだった

2026年の夏、試しにAIへ、私の全取引明細を読ませてみた。

最初に投げた質問はこうだ。

「この明細と実際の為替の動きを突き合わせて、私がなぜ負けたのか、どうすれば勝てていたのかを分析してほしい」

返ってきた答えは、慰めでも精神論でもなく、数字だった。そしてその数字は、私が5年あまり信じていたことをいくつも壊した。「あのとき、一瞬でも全部を閉じて逃げるチャンスはあったのか」——ずっと心に引っかかっていたこの問いにも、明細ベースの答えが出た。

そこから2ヶ月、AIと一緒に、思いつく限りの手法を検証しては捨て、検証しては捨て、を繰り返すことになる。ナンピンの数理的な解剖。有名手法のルールをそのまま数値化した自動売買の成績。逆張り、ドテン、超短期売買——そのほとんどは、過去データの検証で「勝てない」と判明して墓場行きになった。

生き残ったのは、たった一つ。しかもそれは、拍子抜けするほどシンプルな仕組みだった。

次回・第1部では、まず私の敗因を解剖する。取引明細というレントゲン写真に、「99%勝てるのに破産する」構造がどう写るのか。同じ持病を抱えている人には、たぶん他人事ではないはずだ。

連載の全体マップ
図2|連載の全体マップ

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